2006年度本学新入学生(歯学部、薬学部、看護福祉学部、心理科学部)590名を対象として、「対人関係の基本的構え」と「精神的・身体的自覚症状」に関するアンケート調査を実施した。エゴグラムをもとに対人関係の基本的構えを1)自己肯定型(I am OK)、2)他者肯定型(You are OK)、3)自他肯定型(We are OK)に類型化して、精神的自覚症状(16項目)および身体的自覚症状(15項目)の有訴率との関連性について性別に比較検討した。結果、以下の諸点が明らかになった。1)自己の捉え方の分類[肯定群(I am OK):非肯定群(I am not OK)]において、男性女性ともに肯定群にくらべて非肯定群で精神的・身体的自覚症状の有訴率が高い傾向がみとめられた。精神的自覚症状について、男性では「することに自信がもてない」「自分が他人より劣っていると思えて仕方がない」「将来に希望がもてない」などの9項目、女性では「することに自信がもてない」「自分が他人より劣っていると思えて仕方がない」「理由もなく不安を感じる」などの9項目で有訴率が有意に(p<.05)高かった。身体的自覚症状について、男性で「胃・腸の調子が悪い」、女性で「朝起きたときでも疲れを感じる」の1項目で有訴率が有意に(p<.05)高かった。2)他者の捉え方の分類[肯定群(You are OK):非肯定群(You are not OK)]において、男性では非肯定群にくらべて肯定群で自覚症状有訴率が高く、反対に女性では肯定群にくらべて非肯定群で有訴率が高い傾向がみとめられた。精神的自覚症状ついて、男性では「理由もなく不安を感じる」、女性では「すぐ怒鳴ったり、言葉づかいが荒くなってしまう」の1項目で有訴率が有意に(p<.05)高かった。身体的自覚症状では、男性の「朝起きたときでも疲れを感じる」の1項目で有訴率が有意に(p<.05)高かった。3)自己および他者の捉え方の分類[肯定群(We are OK):その他群(We are not OK)]において、男性女性ともに肯定群にくらべて非肯定群で精神的・身体的自覚症状の有訴率が高い傾向がみとめられた。精神的自覚症状について、男性では「することに自信がもてない」「自分が他人より劣っていると思えて仕方がない」「物音や人の声がカンにさわる」などの7項目、女性では「することに自信がもてない」「自分が他人より劣っていると思えて仕方がない」「理由も無く不安を感じる」などの12項目で有訴率が有意に(p<.05)高かった。身体的自覚症状については、男性女性ともに有訴率に差はみとめられなかった。以上のことから、男性女性ともに対人関係の基本的構えと精神的・身体的な自覚症状の有訴率とは相互に関連し、とくに自己に対する構えと精神的自覚症状との間で密接な関連性が示唆された。